中村隆次・田鶴子法律事務所 Nakamura Law Office

まずお気軽にお電話ください 026-235-6677

弁護士紹介

Vol.3 ~現在まで  新たな概念が生まれた時代

DVと○○ハラスメント

田鶴子 ここ数年の大きな動きのひとつといえば、「セクシャルハラスメント」のような○○ハラスメントという言葉や、DV(ドメスティックバイオレンス)という言葉が定着したことじゃないでしょうか。

隆次 過去にずっとあった問題ですが、世間に「認知」されたということですよね。

田鶴子 1989年に「セクハラ」という言葉が新聞紙上をにぎわせました。そして1990年頃に、福岡で20人近い女性が弁護団を組んでセクハラ事件の裁判を起こしたんですよ。東京の弁護士会で女性の人権に関わった錚々たる先生方が一丸になって戦った。勝ち取った慰謝料は150万円でしたが、セクシャルハラスメントに勝てた最初の裁判なんです。そこからですよね、「セクシャルハラスメント」っていう言葉が認知され始めたのは。そしてセクハラの防止義務が男女雇用機会均等法にも盛り込まれるという流れを経てきているんです。

隆次 いま当たり前に使われている横文字も、最初は「なにこれ?」と思われていたものがどんどん定着してきた。その主な担い手が裁判。そこに私たちは関わり続けてきたのです。「DV」もそうだし、企業の「コンプライアンス」という言葉もそうですが、15~16年程前から使われ始めて、私どもはその新しい概念について講演活動などを行ってきた。それが今はもう当たり前の言葉になっている。当たり前になった言葉の「形成」に関わってきたんですね。

田鶴子 離婚事件では、やはりDVの問題は大きいです。夫婦間暴力ですね。DV法ができるまでは、警察に相談しても助けてもらえなかった。「夫婦の問題だから、夫婦で話し合ってね」ということです。当時、私たちは婦人相談所と協力して被害者を逃がすしか術がなかったんです。ですが、DV法ができたことで警察が動くようになった。婦人相談所と警察が連携してくれるんです。これは大きな前進ですね。また、いわゆるモラルハラスメント、「モラハラ」と言っていますが、身体的な暴力は振るわずに、精神的に追い詰めるという暴力もここ最近目立ってきました。「家庭内パワーハラスメント」とも言えますね。これは非常に説明しにくい問題で、身体的なことなら夫が殴った、けがした、診断されましたって訴えることができるんですが、それができない。そのように、精神的に追い詰められて来られる方が増えています。

高齢者問題

隆次 定着した言葉といえば、平成2年に「アルツハイマー離婚訴訟」という当時まだ珍しかった事件に関わりました。アルツハイマーとは、今でいう「認知症」ですよね。民法では「精神病離婚」というものが認められているんですが、その事例ではそれを理由に若年性アルツハイマーの奥さんとの離婚を求めて夫が訴訟を起こしたんです。そこで家庭裁判所から奥さん側の「後見監督人」(後見人の監督役)として私が選ばれた。その当時は、「アルツハイマーってなに?」という時代ですよね。もちろん認知症なんていう言葉もなく、当時は「痴呆症」などと呼ばれていた。結果的に、裁判自体はこの病気を理由にした離婚にはならなかったのですが、アルツハイマーという言葉が周知され始めたという意味では、私自身印象に残る事件でしたね。

田鶴子 まさに先ほどの育児の話と同じで、介護というものも、私の母親世代には「専業主婦」に任されていたわけですよね。お嫁さんが、寝たきりのおじいちゃんおばあちゃんを介護する、という時代だったわけです。ところが平成3年に、働く主婦が働かない主婦を圧倒しました。アルツハイマーという病気が社会的に認知され始めたのと同時に、女性が家庭を持ちながら働き始めた。ここがひとつの転換点なんです。平成12年4月にスタートした介護保険制度っていうのは、確かに財政的な問題は抱えているかもしれませんが、女性の視点からすればひとつの「女性の解放」なんですよ。実際、介護の担い手の8割方が女性でしたよね。ですから、介護も「社会化」できたってことは、非常に大きなことだと思っています。

隆次 近頃は高齢者に関する相談も増えていますよね。

田鶴子 特に介護施設の利用や、高齢者の方の財産管理、扶養をめぐるご相談などが増えていますね。具体的な例ですと、アルツハイマーには「ものとられ妄想」というものがあるんですが、娘さんがきちんと財産を管理していても、お母さんが「わたしのお金が持って行かれちゃう」っていう妄想に駆られて、一所懸命介護している娘さんを飛び越えて、息子さんにお金を全部あげてしまう、といったケースがあります。
また、最近は特殊詐欺の被害に遭う高齢者が増えて、深刻な社会問題にもなっていますよね。去年も約3000万円ものお金をつぎ込んでしまったという高齢者の事件を担当しましたが、そのケースはほとんどの金額を回収することができました。本当に詐欺的な被害は難しいですが、相手が実在する会社の場合は取り戻すことができるので、相談していただきたいですよね。特に現代は、さまざまな高齢者をターゲットにした商法が横行していますから。
ただ、高齢者の場合は「お友達から紹介されたから」とか、「あんなに優しくしてくれる人がだますわけがない」などという方もいらっしゃるので、そこは根気よくお話をして、納得していただいてから取り組みます。ご家族が相談に見えることもよくありますが、ご本人が来ていただかないとお請けすることができないので、ぜひご本人を連れて来ていただきたいですね。

セカンドオピニオン

隆次 もうひとつ、近頃の新たな流れとして、弁護士の「セカンドオピニオン制度」がありますね。お医者さんのセカンドオピニオンと同じで、何人かの先生に相談してから一人の弁護士に決める。

田鶴子 昔なら、学校の先生や医者、弁護士は絶対的な存在でしたが、ある時から依頼者が選択をするようになった。とくに若い方を中心に。今までは弁護士のところにいけば、「とにかく俺に任せておけ」っていうから先生にお願いします、となっていました。たとえコミュニケーションギャップが生まれても、そのままお願いすることがほとんどだったわけです。今はルールとしてセカンドオピニオン制度が弁護士会の規定にもありますので、弁護士を選ぶことができるようになりました。去年手掛けた刑事事件でも、「実はぼく、先生も含めて何軒か事務所を回りました」と言われた。そして「先生が一番きびしい見通しを言われたからお願いした」って(笑)。結局、執行猶予を取ることができました。今はインターネットなどでも情報比較ができますし、「新しい時代が来たな」と思っています。

ページの先頭へ